2000年代を迎えた現在では、ミュージシャンがプライベート・スタジオを持ち、コンピュータ等機器の進化により、
一人で最後まで完結することが普通に行われています。
しかし、このアラゴンが活動した80年代中頃といえば、ディジタルMTRはありましたが、個々のミュージシャン
レベルでは精々カセットMTRか、良くて16Tr位のアナログMTRといったところでしたので、そのままCDなりに
すると言うのは現実的ではありませんでした。
そんな時代に約1年10ヶ月という長い期間、デモテープすら一流のレコーディング・スタジオを使って録音する
徹底ぶりでアルバムを作り上げたアラゴンは、まさに奇跡のバンドと言えると思います。
今さんは、林立夫さんと共にFMラジオ番組に出演するなど、プロモーション活動?にも力を入れていました。

(注意:便宜上、ペダルスティールやボトルネック使用はスライドギターで統一しています)

Aragon Aragon 1985年 1月 21日発表
LP:VIH-28207
CD:VDR-77
TAPE:VCF-10227
VICTOR M. I. (invitation)
A1 家路
A2 HORRIDULA
A3 あやとり
A4 アタタビタタ

B1 手編の音符
B2 力車
B3 かかし
B4 POLARIS
MEMBER:
Tsuyoshi Kon (G,etc.)
Tatsuo Hayashi (Ds,Per,etc.)
Tadashi Nanba (Key,e.t.c.)
Kazuhiro Nishimatsu (Vo,etc.)
Keishi Urata (Syn-prog,etc.)
GEST MUSICIAN:
KENJI TAKAMIZU (B)
SHIGERU OKAZAWA (B)
MICHIO NAGAOKA (B)
MOTOYA HAMAGUCHI (Per)
PECKER (Per)
etc.
1983年2月よりレコーディングを開始し、1984年12月までの長い年月で煮詰めに煮詰めたアルバム。
シンセの音ひとつにも2、3日かけると言う贅沢なつくりとなっており、音の良さは今日聴いても素晴しい
の一言に尽きます。
また、レコーディングにダミーヘッド(NEUMANNなのかなぁ?だったら100万円くらいしたみたいですよ)
というモアイ像のような形をしたマイクが使用され、空気の響きを感じることの出来るアルバムとなって
います。このダミーヘッドは、アラゴンにとって非常に重要な要素であったと言え、アルバムジャケット
の裏にイラストが描かれていることからも、メンバーの思い入れが伝わってきます(そういえば、今さん
ムーンのストラトキャスターのボディーにも、同じイラストが描かれていましたね)。
さて、アルバムの内容の方はというと、シンセ等の電子楽器がフィーチャーされた曲もあれば、民族楽器を
演奏している曲もあるという非常にバラエティーに富んだものでありますが、アラゴンと言うバンドとしての
色というかベクトルがあるので、とても自然なバランスでのまとまりを感じさせます。
今さんのギタープレイは、割と押さえ気味な感じを受けますが、要所要所にツボを得たプレイを聴くことが
出来ます。
個人的には、A4の「アタタビタタ」やB1の「手編の音符」におけるアコースティックギターのアルペジオ
やジャラ〜ンとしたストロークのボイシングがたまらなく好きですが、他にもB2の「力車」のリフやB3の
「かかし」のスライドギター等も聴き所といえます。また、音の魔術師・浦田恵司さんにより、今さん
ギターが隠し味的に使われているはずです、きっと(私の個人的な想像です...)。
また、チャランゴをはじめとする民族楽器のプレイも聴き逃せませんね(詳しくはわかりませんが)。
ジャケットは、古ぼけた壁とドアの写真で、ドアから指が出ているように描かれた絵が不思議な感じを演出
しています。また、上の画像はCDのものですが、レコードは左上にレーベルのマークがあり、右上は空白
となっています。

The Studio Works The Birth Of Aragon 1985年 2月 21日発表
LP:SJX-8110 VICTOR M. I.
A1 完パケ"あやとり"1コーラス
A2 スタジオで作られたデモ・
            テープ
A3 デモ演奏
A4 LINN 打込み開始
A5 LINN 音決め
A6 LINN 録り
A7 Synth.-B. ダビング
A8 Synth. #1 ダビング
A9 Synth. #2 ダビング
A10 Synth. #3 ダビング
A11 駅名あてクイズ

B1 A.Pf. ダビング
B2 Dr. 差し替え
B3 チャランゴのサンプリング
           とダビング
B4 A.G. ダビング
B5 A.Pf. ダビング
B6 マリンバ・ダビング
B7 完パケ・カラオケ エコーなし
          ・1コーラス
B8 完パケ・カラオケ
         ・フルコーラス
MEMBER:
Tsuyoshi Kon (G,etc.)
Tatsuo Hayashi (Ds,Per,etc.)
Tadashi Nanba (Key,etc.)
Kazuhiro Nishimatsu (Vo,etc.)
Keishi Urata (Syn-prog,etc.)

ENGINEER: HIDEO TAKADA
アラゴンにおけるもう一つの奇跡であるこのアルバムは、「あやとり」という曲をデモテープやリズム録りから
完パケまで、制作現場を実際の音源と共にまとめた非常に貴重なレコードと言えます。
アルバム「Aragon」に収録されている完パケは、民族音楽的な要素が強く感じられる曲ですが、デモテープ
作成段階では少しフュージョンライクなもので、それがどのように作り込まれていったかが非常に良くわかります。
それに、付属の解説書(楽譜やトラック・シートも入ってる!!)を読めば細かい部分まで知る事が出来、
レコーディング・エンジニアを目指している人にとって貴重な教科書と言えるでしょう。
また、この「あやとり」今さんの作曲であることもあり、今さんがイニシアティブをとっていますので、ファン
にとってもうれしい内容となっています。
このアルバムが発表になった年の1985年7月25日には、「ザ・スタジオワークス・シミュレーション」と題し、
実際録音が行なわれた ビクター青山スタジオ に於いて、ディレクターの村木敬史氏、小池秀彦氏、エンジニアの
高田英男氏を招いて公開レコーディングセミナーまで行なわれました。本当に凄い事ですよね。
さて、このアルバムは今さんのギタープレイ云々を語るものでは無いのかも知れませんが、A2、A3のデモは
最高です。コーラスやディレイのかかったクリーンサウンドのE.ギターで、ミュートやハンマリング、アルペジオ
等を絡めたバッキングなのですが、これがまた美しいの極致なのです。まさに、今剛ワールド全開といった感じで、
A2においては今さんの歌まで聴けちゃいます。付録の解説でも、この今さんのプレイに対してべた褒めのコメント
が載っています。
しかし、結果的にはバンドの方向性に合わないとの結論で、このプレイは完パケにおいては外されています。
ファンとしては残念ですが、アルバム「Aragon」を聴けば完パケ・バージョンで正解だと納得できますよね。
ジャケットは、ちょっと見づらいですが、ミキシング・コンソールの写真をアーティスティックに加工したもの
となっています。

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