パラシュート以来の盟友である今さんと井上鑑さんは、80年代において日本のエアプレイのような存在で、 数々のヒット曲を創り出してきました。 特に寺尾聰さんの曲における2人は、日本音楽史に残る功績と言って良いと思います。実際寺尾聰さんも、 「ルビーの指環」は今さんと井上鑑さん無くして生まれなかったし、2人がいたからこそレコード大賞を受賞 することができたのだと言っています。 最近では、昔ほど2人のコラボレート作品を聴くことが出来ませんが、80年代にはかなりのヒット曲で聴くことが できました(今後「My Favorites」のコーナーで紹介していきます)。 ここでは、井上鑑さんのソロアルバムにおいて、今さんがSOUND PRODUCE等でクレジットされている アルバムを 中心に紹介したいと思います。 ここで紹介する4枚以降もプレイヤーとして参加しているものがありますが、現在はそれぞれ新しい道を模索 しており参加が減っています。 |
(注意:便宜上、ペダルスティールやボトルネック使用はスライドギターで統一しています)
PROPHETIC DREAM | 井上 鑑 | 1982年 3月 1日発表 |
LP:ETP-90147 TAPE:ZH28-1139 |
TOSHIBA EMI (EXPRESS) | |
A1
バルトークの影 A2 SUBWAY-HERO A3 レティシア A4 DOUBLE-CROSSING A5 LOST PASSENGER B1 リンドバーグ物語 B2 ヒンデンブルグ号へようこそ B3 COSMONAUT コスモノート B4 GRAVITATIONS B5 ユヴェスキューレ |
MUSICIAN: Tsuyoshi Kon (G) Masaki Matsubara (G) Akira Inoue (Key,Vo,A.Harp) Issei noro,Sigeru Suzuki (G) Kenji Takamizu (B) Tsugutoshi Goto (B) Shigeru Okazawa (B) Akihiro Tanaka (B) Hideo Yamaki (Ds) Tatsuo Hayashi (Ds) Nobu Saitoh (Per) Motoya Hamaguchi (Per) Nobuo Yagi (Harmonica) Eve (B.Vo) | |
井上鑑さんのソロ第一作目。今さんは
CO-SOUND CRAFTMAN としてクレジットされています。 当時ヨコハマタイヤASPECのCMで話題になっていた「GRAVITATIONS」や「レティシア」を含む全10曲、 実在の人物や映画の登場人物である10人の男をテーマにしています。 アルバム全体にスティーリー・ダンに近い雰囲気が感じられ、特にA1の「バルトークの影」などは、ajaの 「JOSIE」のアレンジにそっくりで、ベースなんかは思わずニヤッとしてしまうようなフレーズを弾いています。 この曲はまさに確信犯的なアレンジですが、井上鑑さんの凄いところは、普通単なる猿真似になるところを、 この曲の為にあるような自然さでアレンジを取り込んでいます。これはミュージシャンの起用に関しても言え、 それぞれのミュージシャンの色を、まるで画家がパレットにある絵の具を混ぜて新しい色を創るように、 自分の世界に溶け込ませています。 そして今さんの個性も、この頃の井上サウンドには欠かせない要素(色)であったと言えると思います。 今さんのギタープレイは、ギターの入っていないA5を除いた9曲すべてが聴き所だと思いますが、特に A1の「バルトークの影」のスライドギターによるイントロとカッティング、それにエンディングのソロは スティーリー・ダンの方のソロより断然かっこいいです。 また、B5の「ユヴェスキューレ」のスライドギターのソロも最高です。 ジャケットは、RAINER C. FRITZ氏によるイラストで非常にスピード感のある仕上がりとなっており、 また全体のアートディレクションは井上鑑さんが自ら担当しています。 |
CRYPTOGRAM | 井上 鑑 | 1982年 12月 1日発表 |
LP:ETP-90203 TAPE:ZH28-1265 |
TOSHIBA EMI (EXPRESS) | |
A1 SHELL A2 メフィストフェレスとの ドライブ A3 夏の夜の夢 :オースゴールストランの海辺 A4 クリスチャニア・ボエーム (エドワルド・ムンクの肖像) B1 KICK-IT-OUT!! B2 [SEND ME A] CRYPTOGRAM B3 冬の鏡:風の鏡 B4 PABLOに B5 FLASH-BACKS B6 WAVERS #2:オーロラ |
MUSICIAN: Tsuyoshi Kon (G,Pedal Bass) Akira Inoue (Key,Vo,Per) Hideo Yamaki (Ds) Stuart Elliot (Ds,Simmons) John Giblin (B) Tsugutoshi Goto (B) Kenji Takamizu (Wood B.) Shigeru Okazawa (B) Ian Bairnson (G) Martin Gatt (Fagotto) Nigel Warren-Green (V.C) Motoya Hamaguchi (Per) Momo (B.Vo) A.M.S.Brothers (B.Vo) Jon Kelly (Echo) | |
前作のスティーリー・ダン風のサウンドから大きく変化し、エコー感の強いブリティッシュ・
サウンドと なっています。これは、アランパーソンズプロジェクトやブランドXのメンバーが参加したこともありますが、 一番はエンジニアそしてSound ProducerとしてクレジットされているJon Kelly氏によるところが大きいと 思います。今さんもJon Kelly氏同様、Sound Produceでクレジットされており、ギタープレイ以外でもこの アルバムの完成度の高さに貢献しています。 ギタープレイは、A2、A4、B2、B3、B5とソロにバッキングにと聴き所が多いですが、やはりA3の 「夏の夜も夢:オースゴルストランの海辺」とB6の「WAVERS #2:オーロラ」の ジョワ〜んという感じの バッキングのボイシングとサウンドが一番だと思います。この手のバッキングは、これより後に数多くの曲で 聴かれるようになり、今さんのトレードマーク的な感じになっていて、ボリュームペダルにADAのフランジャー のペダリングも加え、奏法的にはハーモニクスやトレモロアームなども絡め、他に追従を許さない美しさです。 そして今さん独特のボイシングに、この奏法をあわせることにより美しさが倍増するのです。 これはスライドギターやカッティングと並ぶ、今さんの素晴しさの1つですね。 他にもうひとつ、B1の「KICK-IT-OUT!!」のリフが凄いです。これこそ井上鑑ワールドで、寺尾聰さんの 「HABANA EXPRESS」にも通じるところがあります。 とにかく素人が聴いても、難しいんだろうなと思えるほどで、3連・転調の嵐にリズムの難しさ、ギターの 指板上をあちこち移動するような感じで、とても凄い。一聴の価値がある曲です。 ジャケットは、井上鑑さんのペンによるイラストで、前作に続き非常にARTしています。 |
SPLASH | 井上 鑑 | 1983年 10月 1日発表 |
LP:ETP-90246 CD:CA35-1055 TAPE:ZH28-1359 |
TOSHIBA EMI (EXPRESS) | |
A1
さまよえるオランダ人のように A2 アドリアン・ブルー A3 異星(ソラリス)の女 A4 LE PLONGEUR A5 ELEVEN ISLANDS B1 サファリ・オスティナート B2 リンダ・ラルー 〜ラムの大通りにて〜 B3 海底2万マイル B4 オンディーヌ |
MUSICIAN: Tsuyoshi Kon (G) Akira Inoue (Key,Syn, Stick,Timpani,Vo) Alan Murphy (G) John Giblin,Morio Watanabe (B) Kenji Takamizu (B) Tatsuya Honda (Stick) Tatsuo Hayashi (Ds,Per) Hideo Yamaki (Ds,Per) Yasukazu Sato (Per,Bamboo ,Mari.) Clive Anstee (V.C.) Ikuko Takeuchi (Mandorin) Momo,Buzz (B.Vo) |
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前作に引き続きJon Kelly氏をエンジニアに迎えた3rdアルバム、この作品より今さんはギタリストとしての クレジットのみとなっています。しかし、ギターパートの無いA4とB2以外の曲では、今さんのギターが 重要な要素として彩りを加えています。 アルバムを通してソロはAlan Murphy氏にまかせ今さんはバッキングに専念しており、ソロらしいソロは A3の「異星(ソラリス)の女」くらいで、B3の「海底2万マイル」はギターソロとクレジットがありますが ソロって感じではありません。 バッキングの方はまさに本領発揮と言え、どの曲を聴いても曲を活かすプレイをしています。 個人的にはA2の「アドリアン・ブルー」におけるアコースティックギターのカッティングが大好きです。 そしてB4の「オンディーヌ」は前述のジョワーンとしたバッキングで、アルペジオも絡め美しさの極致です。 深めのコーラスエフェクトに効果的なディレイ、絶妙なヴォリューム・ペダリングとボイシング今さんにしか 出し得ないものです。他の曲にも言えますが、もし今さん以外のギタリストであったなら全く違う印象の曲と なっていたのではないでしょうか? またこの曲は、FM放送にてのスタジオライブで演奏されたものが、当時流行りのカセットマガジン形式で発表 された「カルサヴィーナ(1984年11月5日発表)」に歌抜きで収録されていて、こちらも大変美しいプレイを 聴かせてくれます。 ジャケットは、アルバムタイトルである「SPLASH」=「水の音?」をイメージしたものとなっています。 |
架空庭園論 | 井上 鑑 | 1985年 3月 1日発表 |
LP:ETP-90317 CD:CA32-1108 TAPE:ZH28-1485 |
TOSHIBA EMI (EXPRESS) | |
A1
THE BEAT OF POLLUTION A2 5000本の樫の木 A3 A MOMENT IN A MORNING A4 架空庭園論 B1 GIORGIO DE CHIRICO/庭 B2 7月のCAMEL B3 POISONED DREAM B4 時計と野生 B5 FOREST OF THOUGHT |
MEMBER(AKIRA
INOUE UNIT): Akira Inoue (Key,Syn) Jhon Giblin (B) Alan Murphy (G) Hideo Yamaki (Percussive Instruments) GEST MUSICIAN: TSUYOSHI KON (G) MASAKO KAWAMURA (Koto,17-st koto) JAKE H.CONCEPCION(Woodwinds) TOMOKO SORYO (B.Vo) MOMO,EVE,HIROSHI KOIDE (B.Vo) HIROKO CHATANI (B.Vo) HIROKO TAKEMURA (B.Vo) | |
AKIRA INOUE UNITの演奏による、4thアルバム。 2作目より参加のJhon Giblin氏、前作より参加のAlan Murphy氏をフューチャーしたアルバムとなっています。 今さんもゲストにてのクレジットとなっていますが、1984年7月14日から5日間河口湖スタジオで行われた リズム録りにも参加し、事実上このユニットの一員と言えると思います。 実際、7月24日に渋谷LIVE-INNで行われた井上鑑UNITのライブにもメンバーとして参加しています。 さて、肝心のアルバムの内容の方は、非常に凝ったつくりとなっており、録音テープの切り貼りも多用 されているようです。 今さんのプレイは、割と黒子に徹したプレイをしており、前作までのようにバッキングすら全面にでている 感じとは違います。これはユニットとしてのトータルバランスを出す為だったのではないかと思われます。 そんな中でもA4の「A MOMENT IN A MORNING」のスライドギターは絶品ですし、B5の「FOREST OF THOUGHT」も非常に美しいです。 ジャケットは、横尾忠則氏の手によるものでアルバムタイトルの「架空庭園論」にどう結びつくのか絵心の 無い私にはわかりませんが、不可思議な感じがして好きです。 |